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世界中の飲食店がマーケティングに「トイレのデザイン」を活用する理由

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クーリエ・ジャポン(講談社)
概要

飲食店で求められるのは何よりも料理の味だ。だが、世界ではいま上質かつユニークな顧客体験を提供するために「トイレのデザイン」に注力する飲食店が増えていると複数の海外メディアが報じている。例えば、ロンドンの飲食店「スケッチ(Sketch)」内のトイレ(写真参照)。アーティストとのコラボや季節のデコレーションで彩られることも多い。

 

昨今の自撮り文化と相まって、SNS上ではトイレのデザインをきっかけに飲食店のことを知る人たちも増えている。今後、外食産業における新たなマーケティング戦略のひとつとして、トイレは重要な位置を占めそうだ。

       

      重要なのは「自分を美しく感じられること」

       

      2024年に入って以降、欧米を中心にTiktok上で「#bathroomselfie(トイレで自撮り)」のハッシュタグがついた投稿が急増している。飲食店にとっても、SNS上での認知獲得はビジネスの成功に不可欠な要素になりつつあり、「SNS映え」の対象はいまや料理やホール内だけではなくトイレにまで及んでいる。

       

      米誌「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」は2024年8月、「最近のレストランで最も重要な部屋はトイレだ」と題した記事(外部サイトに移動します)を掲載した。記事中で紹介されている店の一つは、フライドチキンとシャンパンが楽しめることで話題になっているニューヨークのレストラン「ココダック」(Coqodaq)。黒を基調としたトイレ内の洗面台には楕円形の鏡が並び、鏡の周りは暖色のライトに囲まれている。6種類の高級ハンドソープも用意されており、蛇口もイタリア製のものを使用するなど細部にまでこだわってデザインされている。

       

      ココダックのトイレを手がけたデザイナーのデイビッド・ロックウェルは、この洗面台をレストランの中心に配置することで、活気あるマンハッタンの街から落ち着いた食事の空間への移行を滑らかにしていると、ブルームバーグ・ビジネスウィークの取材に対して語っている。

       

      ロックウェルはこの洗面台を「自撮り空間にするつもりはなかった」とも付け加えている。しかし、穏やかなライトで照らされた非日常的な空間は「自撮りに最適なスポット」だと、ブルームバーグ・ビジネスウィークは評する。

       

      ロックウェルはこれまでにも世界各地の日本食レストラン「NOBU(ノブ)」、ザ コスモポリタン オブ ラスベガス、シンガポールのマリーナベイ・サンズ・カジノなど多くの施設の空間デザインを担ってきた。彼は「トイレにおいて私たちが目指すのは、お客様の顔を美しく立体的に見せること」だとも語っている。

       

      ニューヨークの「シェ・フィフィ(Chez Fifi)」やストックホルムの「フランツェン(Frantzén)」をデザインしたリサ・グレープも、トイレでは明るさを重視していると言う。

       

      「トイレのデザインにおいて重要なことのひとつは、光です。鏡を見たとき、お客様にはご自身を美しく、自信に満ち、セクシーだと感じてほしいのです。そのためにはあくまで自撮りに最適な明るさでなければなりません。いろいろ自分の嫌な部分が見えすぎて帰宅したくなるような明るさではだめなのです」

       

       

      トイレのデザインを評価するガイドも登場

       

      ユニークなトイレを手がけることは、「レストランの印象を植え付けるために効果的かつ簡単な方法だ」と語るのは、南カリフォルニアの内装デザイン企業で働くデザイナーのミーガン・パワーだ。彼女がデザインしたサンディエゴの飲食店「ル・コック(Le Coq)」では、トイレの壁紙をサイケデリックなデザインにし、タイル張りの廊下を2体の豪華な雄鶏の剥製で飾っている。「レストランで一番写真に撮られる場所にもなり、客同士で話題にもなる」とパワーは前出のブルームバーグ・ビジネスウィークの取材に対して語っている。

       

      トイレで顧客を惹きつけた事例で、先駆けとも言えるのがロンドンのレストラン「スケッチ(Sketch)」だ。英ウェブメディア「ハンドブック」が2024年9月に掲載した記事(外部サイトに移動します)では「スケッチのトイレはロンドンでもっともインスタ映えするスポットだと言えるだろう」と報じられている。スケッチのトイレに入ると、目に飛び込んでくるのは天井に施されたカラフルなガラス。そして、12個の卵形をした個室だ。季節にあわせて装飾も変わるので、顧客は訪れるたびに違う光景を見ることになる。

       

      カナダのトイレット・ペーパー製造販売企業「カシミヤ」は、トロントの飲食店のトイレを照明やレイアウトなど複数の基準で評価する「the UltraLuxe Bathroom Guide」を展開している。高得点を記録した飲食店は同社の公式ウェブサイト(外部サイトに移動します)で紹介されている。レストランでの体験で重要な要素となるトイレのオリジナリティは、今後さらに注目される可能性がある。

       

       

      新しい広告チャネルとしても機能

       

      オーストラリアのウェブメディア「B&T」は2024年6月に掲載した記事(外部サイトに移動します)で、「トイレは気が散ることのないプライベートな環境で顧客エンゲージメントを創出するチャンスがあり、ほかの広告媒体をはるかに超えるメリットをもたらす」とし、個室の中でも洗面台の前でも、自然な視線に広告を配置することができるため、多くのデジタルプラットフォーム上で問題となっている広告疲労(ウェブ上での広告が多すぎるためにユーザーが適切に情報を判断できなくなってしまう状態)とも無縁であるとも付け加えている。

       

      家庭以外の場所で展開される広告は総称して「アウト・オブ・ホーム広告(OOH広告)」と呼ばれる。これまでもトイレにポスターなどが貼られるといったことはあったが、これからはトイレ自体が新しいOOH広告の場として、顧客との対話を図ることを目的に活用されるようになるかもしれない。「映えスポット」としての話題性を狙うだけではなく、トイレの可能性を引き出す試みは今後も続くだろう。

       

      アメリカン・エキスプレスとクーリエ・ジャポンは、起業家の学びの機会となるような経験や情報を届けるプログラムを提供し続けることでスモールビジネスオーナーを力強く支援し続けています。クーリエ・ジャポンに掲載中の記事もぜひご覧ください 。(外部サイトに移動します)

       

      【スタッフクレジット】

      文・編集:クーリエ・ジャポン(講談社)

      写真:Getty Images

       

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      Published: 2024年10月29日

      Updated: 2025年4月28日

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