【目次】
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用によりビジネスモデルを変革し企業価値を高める取り組み
DXが推奨される背景と懸念されるリスク
DXの進め方
DXのまとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用によりビジネスモデルを変革し企業価値を高める取り組み
DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、ビッグデータなどのデータやAI、IoTといったデジタル技術を活用して企業価値を高める取り組みを指します。システム導入や業務効率化にとどまらず、企業のビジネスモデルや製品、サービスのほか、組織文化までも変革させ、競争上の優位性を確立することを指す包括的な概念です。
このDXという概念は、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。ストルターマン教授は論文「Information technology and the good life(外部サイトへ移動します)」の中で「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる」と述べています。DXは当初、社会全体の変革を指す概念でしたが、今日では企業活動における変革の文脈で使われることが多くなっています。
なお、「DT」ではなく「DX」と表記されるのは、英語で交差するという意味を持つ「trans」が同義語の「Cross」で表現され、その略称として「X」が使われるようになったためです。
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DXの定義
経済産業省は、2024年9月に改訂した「デジタルガバナンス・コード3.0(外部サイトへ移動します)」において、DXを以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化や風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
IT化、デジタル化、デジタイゼーション、デジタライゼーションとの違い
DXと類似した概念である、IT化やデジタル化、デジタイゼーション、デジタライゼーションとの違いを明確にすることは、DXを正しく理解するうえで重要です。
IT化、デジタル化、デジタイゼージョン、デジタライゼーションそれぞれの定義は以下のとおりです。
・IT化:これまでアナログで行っていた業務などに対して、コンピューターとネットワークを利用した情報技術を活用して業務プロセスなどを「効率化」させることを指す。
・デジタル化:デジタル技術を活用した取り組み全般を指す。大きくは、アナログのデジタル化を意味する「デジタイゼーション」、ビジネスプロセスのデジタル化を意味する「デジタライゼーション」、ビジネスモデルのデジタル化を意味する「デジタルトランスフォーメーション」の3つに分類される。
・デジタイゼーション:「デジタル化」の1つで、アナログのデータや物理データをデジタルデータに変換すること指す。
・デジタライゼーション:「デジタル化」の1つで、業務や製造プロセスなどフローやプロセス全体を、デジタル技術の活用によりビジネスモデルを変革させ新たな利益や価値を生み出すことを指す。
DXが推奨される背景と懸念されるリスク
DXは単なる流行語ではなく、現代の企業にとって不可欠な取り組みです。ここでは、DXが推奨される背景と懸念されるリスクについて、経済産業省が2018年から発表している「DXレポート(外部サイトに移動します)」をもとに解説します。
2018年「DXレポート」:ITシステムの「2025年の崖」問題
経済産業省は、2018年に発表した「DXレポート(外部サイトに移動します)」では、老朽化したITシステム(レガシーシステム)に依存し続ける企業が多いことから、業務の柔軟性や効率性が低下し、競争力の低下、サイバーセキュリティリスクの増加、業務停止リスクの高まりなどが懸念され、DXを進められなければ、日本は将来的に年間で12兆円もの経済損失を被る可能性があることを「2025年の崖」と表現して警告しました。
2020年「DXレポート2」:レガシー企業文化の変革の必要性
2020年に発表された「DXレポート2(中間取りまとめ)(外部サイトへ移動します)」では、DXの進捗状況と、その課題が整理されました。9割以上の企業がDXに未着手、またはまだ途上の段階であり、特に新型コロナウイルス感染症拡大の影響でDX対応の遅れが顕著になったとされ、DXが進まない理由として、同レポートでは以下の課題が挙げられています。
<DXが進まない主な理由>
・老朽化したレガシーシステムに依存し続けている
・経営層の理解、関与が不足している
・デジタル人材が不足している
これらの課題を解決するためには、経営戦略の見直しや業務プロセスの抜本的なデジタル化、そして人材の育成が不可欠であること、また、単に技術を導入するだけでなく、企業文化そのものを変革し、全社一丸となってDXを推進する体制を構築する必要があると強調されています。
2021年「DXレポート2.1」:ユーザー企業とベンダー企業の相互依存による問題
2021年に発表された「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)(外部サイトへ移動します)」では、日本企業がDXを進めるうえでのさらなる課題として、ユーザー企業とベンダー企業の相互依存関係が指摘されました。
従来、日本のIT業界では、ITを利用するユーザー企業と、それを提供するベンダー企業が役割分担をしてきましたが、この関係性がDXの推進を妨げる要因となっており、ユーザー企業が自社の業務改革やビジネスモデル変革に主体的に取り組まず、ベンダー企業に過度に依存する構造になっていることが問題視されました。
これからの企業は、業界の垣根を超え、データとデジタル技術を駆使して価値を生み出し、自ら新しい価値を創造していく必要があると示唆されています。そうすることで、企業が業種や業界の枠を超えて連携し、データとデジタル技術を活用して新たな価値を創出する「集合体」となり、日本全体としての競争力を高める「デジタル産業」へ変革できると提言されています。
2022年「DXレポート2.2」:デジタル産業への変革
2022年に公表された「DXレポート2.2(外部サイトへ移動します)」では、企業のデジタル投資の約8割が既存ビジネスの維持や、運営に費やされ、サービスの創造や革新(バリューアップ)への投資が進んでいない現状が指摘され、DXを成功させるためには、以下の3つのアクションが重要だとされました。
<DXの成功に必要な3つのアクション>
・デジタルを、省力化や効率化ではなく、収益向上に活用する
・経営者はビジョンや戦略だけでなく、「行動指針」を示す
・個社単独でのDX実現は困難であるため、経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集め、互いに変革を推進する新たな関係を構築する
こうした方向性を社会全体で推進するために、経済産業省は、デジタル産業への変革に向けたビジョンと、DXレポート2.2で示された3つのアクションを実現するための指針として、「デジタル産業宣言」を策定しました。この宣言の理念を企業行動へと結びつけるため、企業に対するガイドラインである「デジタルガバナンス・コード3.0」にも、その内容が反映されました。企業には、単なるITの利用者にとどまらず、デジタル技術を活用して新たな価値や産業を創出する担い手になることが、国としても明確に求められているのです。
DXの進め方
DXの具体的な進め方について、7つのステップにわけて解説します。
Step1.現状の調査
まずは、現状を客観的に把握する必要があります。ビジネスプロセス、ITシステム、組織文化、顧客ニーズに加えて、競合他社のDXの取り組み状況も含めて調査し、自社のデジタル化の進捗や課題を明確にしましょう。
Step2. DXの目的とビジョンの明確化
何を目的とし、DXによりどのようなビジョンを実現したいのかを明確にすることも不可欠です。競争優位性を高めるためにデジタル技術をどう活用するかを具体的に検討することも必要でしょう。
Step3. 現状課題の分析と優先順位の決定
続いて、業務プロセスやITシステムの現状を可視化し、課題を洗い出します。既存システムのブラックボックス化や人材不足などの課題を特定したうえで、どの領域からDXを進めるべきか、影響度や実現可能性を評価したうえで、優先順位を決めましょう。
Step4. DX戦略とロードマップの策定
明確になった課題に対し、課題解決のためのDX戦略とロードマップを策定します。ロードマップでは、短期(1年以内)、中期(1〜3年)、長期(3年以上)のマイルストーンを設定し、ステップごとの目標と進捗を管理できるように、各ステップでの達成すべき成果やKPI(重要業績評価指標)を明確化することが重要でしょう。
Step5. DXを推進する組織づくりと人材の準備
DXを本格的に進める前に、社内にDX推進チームを立ち上げ、そこに必要な人材を配置し、育成することが重要です。また、チームメンバーだけでなく、社内全体でデジタルへの理解を深めるために、従業員向けのデジタルリテラシー研修や教育プログラムを実施するなど、DX推進に向けた意識を従業員一人ひとりに浸透させ、持続的にDXを推進できる体制を整備することも必要です。
Step6. デジタル技術の導入と業務プロセス改革の実行
クラウドやAI、データ活用など、課題解決のための最適なデジタル技術を選定し、導入します。併せて、ペーパーレス化や業務の自動化、部門間のデータ連携など通じて業務プロセス全体を見直し、業務の効率化と可視化を行いましょう。こうした取り組みにより業務プロセスを改善し、組織全体の生産性向上を目指しましょう。
Step7. 小規模導入で効果を検証して全社へ展開
戦略と体制が整ったら、まずは特定の業務や部門を対象に、選定したデジタル技術や業務プロセスの改善施策を試験的に導入します。こうしたスモールスタートでの取り組みにより、実際の運用における効果や課題を把握しやすくなります。導入後は、業務効率化や売上改善、顧客満足度など事前に設定したKPIをもとに成功要因や改善点を分析し、得られた知見を活かして他部門や全社に展開しましょう。
DXのまとめ
以下に、DXの要点をまとめます。
・DXとは、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセス、組織そのものを変革し、企業価値を高める取り組み
・企業の競争力を維持、強化するためには、DXの推進が不可欠であり、その背景にはレガシーシステムや人材不足といった構造的課題がある
・DXを成功させるには、経営層のリーダーシップのもと、明確な戦略と段階的な実行、そして全社的な意識の共有が重要
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