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【コンビニエンスストア髙橋】天然酵母パンも買える「なんかいいコンビニ」 まじめに変わり続ける

天然酵母パンも買える「なんかいいコンビニ」 まじめに変わり続ける コンビニエンスストア髙橋
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江六前一郎
概要

東京 練馬区春日町にある「コンビニエンスストア髙橋」は、夫・髙橋諒自氏が焼く天然酵母パンと、妻・髙橋ネイト氏が作る料理が楽しめる人気店だ。

ユニークな店名が印象的だが、二人が選んだクラフト精神が宿った食材や調味料も買うことができ、 “ここに行けば生活にまつわる良いものが何でも揃う”という意味において、確かにコンビニエンスストアといえるだろう。

「地元のおじいちゃんやおばあちゃん、子どもたちにも愛されるような、昔の商店街にあった集会所のような店にしたい」というオルタナティブなコンビニエンスストアを目指す二人に、これからの展望や大切にしている価値観を伺った。

      目指すのは「パン屋」とか「カフェ」ではなく、コンビニ
      地元の子どもからお年寄りまでみんながきてもらえるような場所

       

      「コンビニエンスストア髙橋」という店名に込めた思いから教えてください。

      髙橋諒自さん(以下、諒自):店名そのままで、まじめにコンビニエンスストアを目指しています。パンや調味料などの食品や日用雑貨が買えて、イートインもできる。イメージは、コンビ二をフランチャイズでやっている地方の個人商店です。

      髙橋ネイトさん(以下、ネイト):近くにあって、気をはらずに来れて、夜ご飯もある。一人でも、お友だちとおしゃべりをしにきても良い。そういう場所をつくりたかったんです。だからインターネットの口コミサイトなどで「パン屋」とか「カフェ」と分類されると、不甲斐なさを感じてしまいます。

      諒自:そうそう、本当にコンビニを目指しているからね。ベーカリーカフェがブームというのもあって、取り上げていただく機会があるのは本当にありがたいことなのですが、ブームの一部だと見えてしまうので、そうすると自分たちがやっていることを見てもらいにくくなるというか。コンビニエンスストア髙橋はあくまで、地元の子どもからお年寄りまでみんながきてもらえるような場所にしたいので、あまりおしゃれにはなりたくないんです。

      ネイト:ブームというか、「おしゃれ」が来店の目的だと、次のおしゃれがでてくるとそこを目指して別のところに行ってしまう方が多いように思うんです。実は、今のコンビニエンスストア髙橋は、ちょっと小綺麗すぎると思っていて、もっと場末のバーのようにというか生活感を出したいというか、汚くならないようにはしつつ、適度によごしていけたらいいなぁと。今は、きまりすぎていてちょっと恥ずかしいと思っているんです(笑)。

      おしゃれだなとも思いますが、地元感があって温かい雰囲気なので、近所の方々の集いの場という感じで居心地がいいです。

      諒自:そう言ってもらえると、とてもうれしいですね。昔の商店街には、おじいちゃんやおばあちゃんが集まってお茶する商店があったんです。それを今風に解釈したコンビニをやったら、いろいろ可能性がでてくると思ったんです。店内で音楽ライブもやっていますし、先日は結婚式の三次会をやりました。めちゃくちゃよかったんですよ。広いスペースがあるので、やりたいことがあれば自由に使ってもらいたいと思っていました。友人から提案があり、自分たちとしても思いがけない使い方をしてもらえたのもうれしかったです。やりたいことがあれば自由に使える。広いスペースがある場所にしたいというのは、物件を決めるときの決め手にもなりました。僕たちは与えられた環境の中で表現するのが好きだし、得意なんです。だからお題をもらったらこの場所をどう使えるか考えてイベントもつくります。それにそこでコンビニエンスストア髙橋として提供するものは、専門店並みのクオリティーのものを出したい。そこに妥協はしたくないと思っています。

       

       「コンビニエンスストア髙橋」店主の髙橋ネイトさん(左)、髙橋諒自さん(右)夫妻。

      「コンビニエンスストア髙橋」店主の髙橋ネイトさん(左)、髙橋諒自さん(右)夫妻

       

      どんどんいろんな可能性がでてきそうですね。

      諒自:開店して2年半(2020年11月オープン)が経ちますけど、まだまだ店としては未完成だと思っています。パン担当の僕がいて、妻が料理を作ってドリンクも担当していますが、例えばもしここにコーヒーを淹れるバリスタや、お酒やドリンクを作れるソムリエやバーテンダーが入ってきたら、店に厚みがでてくると思うから、「これからどう変わっていくか」を常に大事にしたいです。

      ネイト:どんなネガティブなことがあっても受け入れられる店でありたいですし、同時に変化に対して臆病にならず、常により良く進化していける店でありたいよね。

      諒自:そういう「可能性を潰さない可能性がある店」でありたいし、変わっていける拡張性がある店でありたいと思っています。それもあって事業計画とかビジネスの計画をつくってそれを元にして動く、ということはあまりないですね。基本的には、やりたいかやりたくないかで決めています。例えば、何かのチャンスがあったとしてもまったく興味がないものはサラっと流します。ただ、これはコンビニエンスストア髙橋の新しい要素として面白いと思ったり、直感的にいいと思ったものがあれば、どうやったらできるかを考えて進めていく感じです。今まで二人ともさまざまな経験をしてきているので、実現させる方法は考えられるだろうと思っているせいか、道を自分で決めてそこに向かって行くのではなくて、“どうやったら乗れるか”と波待ちを(諒自氏はサーファー)いつもしている感じです。

       

      店内には焼きたてのパンに発酵調味料、古雑誌に食器までが所狭しと並んでいる。天井に吊り下げられたサーフボードも印象的だ。

      店内には焼きたてのパンに発酵調味料、古雑誌に食器までが所狭しと並んでいる。天井に吊り下げられたサーフボードも印象的だ

       

      経営的な観点よりも優先するのは地元のお客さんたちがどう思うか
      地元に根差した店を作っていきたい

       

      とはいえ、材料費の高騰など自分たちではコントロールできないことが起こると、対応せざるを得ないこともあるのでは? 販売価格の決め方や、決める際に大事にしていることを教えてください。

      諒自:パンの価格も決め方は感覚的だと思います。例えば自分がお客さんだったとして、まずはそのパンを手にとってみて、300円という値付けで許せるかどうか。その上で食べてみて、300円という値段に対してどう感じたか、という点をは大事にしています。

      ネイト:手が込んでいるから高くしてもいいというわけでもなく、いくらなら自分たちが買って帰りたいと思うかを考えます。たとえば、うちでは270円で販売しているフランス菓子の「カヌレ」は、作るのにすごく時間と手間がかかるし、場所をとるんです。だからといって、あの小さなお菓子が500円といわれても、来てくれている地元のおばあちゃんや子どもたちには、どんなに良いものを作っていたとしても伝わりづらいと思うんです。

       

      パン窯で焼き上げるカヌレは、外側のサクサクっとした食感がたまらない。

      パン窯で焼き上げるカヌレは、外側のサクサクっとした食感がたまらない

       

      諒自:原材料の価格高騰は、飲食店にとっては重要な問題なので、値上げは徐々にしていかないといけないとは思っています。実際に今までもしてきてはいます。パンでいえば、使っている材料は開店当時から変わっていないので、材料費が上がった分だけ上げさせてもらったりしています。それでも、値段をあげる場合は、スタッフ全員と話して「みんなが上げてもいい値段」として納得してからあげるようにしています。

      ネイト:経営的な観点では「やり方がまちがっている、もっとうまくできる」と言われてしまうかもしれないのですが、なるべく値上げをしたくないんです。みんなが気をはらずに来れる場所でいたいので。最近は、人によって値段を変えてもいいんじゃないかとも思っています。ゆっくりおしゃべりがしたい高齢のおばあちゃんやおじいちゃんたちにはコーヒーを割り引きしたり、たくさん食べたい子どもたちにはパンを安くしてあげたり。そういうことができるお店でもありたいんですよね。

       

      ネイトさんが作るデリプレートは定番の人気メニュー。ファラフェルにフムス、季節のサラダ。諒自さんが焼くパンと一緒にどうぞ。

      ネイトさんが作るデリプレートは定番の人気メニュー。ファラフェルにフムス、季節のサラダ。諒自さんが焼くパンと一緒にどうぞ

       

      店舗を経営していくにあたり、お二人が参考にされていたり、影響を受けているカルチャーや考え方、店舗などがあれば教えてください。

      諒自:コミュニティー的なものとしては、自分が勤めていた店でもある鎌倉の「PARADISE ALLEY BREAD & CO」です。勝見淳平さんがオーナーの「休憩所」というコンセプトのパン屋さんで、朝は通勤前にコーヒーを飲みに勤め人の方がいらっしゃるし、小学生たちは下校の時に寄ってくれる。子どもから大人まで、日常的に愛されているお店のスタイルがすごくかっこいい。簡単に真似できることではないけどフォロー(後を追い)し続けていきたいです。

      僕がオーストラリアから帰ってきてから1年間ほど働かせてもらいました。順平さんは、その後もいろいろなタイミングで相談にのってもらいましたし、たくさんの人を紹介していただいた恩人でもあります。

      オーストラリアにいらっしゃったんですよね。

      諒自: はい、サーフィンが目的で25歳の時にオーストラリアへ行きました。ニューサウスウェルズ州のバイロン・ベイにいた時に働いていた「Heart & Halo」というベジタリアンレストランは、英語を話せない日本人の僕を雇ってくれました。僕以外にもいろいろな国の人が働いていて。寛容に誰しもを受け入れるというお店のあり方が、すごくいいなと思ったんです。

      バイロン・ベイは、サーフィンの聖地といえる場所で、観光客も多いのですが「Heart & Halo」は、ローカルのお客さん向けに、スパイスから作ったカレーだったり、ちゃんと手をかけた料理を安く提供していたんです。今はお店はなくなってしまったんですが、僕たちもそういう地元に根差した店を作っていきたいですね。

      諒自:あとはハブスポット社の共同創業者でCEOのブライアン・ハリガン氏の本『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP、2011年)も参考にしたかなぁ。グレイトフル・デッドってライブの録音をファンに許可したり、とてもユニークなスタイルのバンドで。自分たちの音楽が広がったらいいじゃんって。僕たちもお客さんに何かを開示することにあまり抵抗がないし、むしろオープンであることで可能性が広がっていくんじゃないかと思っています。

      ネイト:まだまだ足元にもおよばないんですけど、私も自分が働いていた「ROSE BAKERY」(東京・銀座、丸の内)は、メニュー作りの点で参考にさせてもらっています。

       

      失敗から学ぶことは多い
      謝るより失敗から何を感じとれるかの方が、数倍大事

       

      成功事例より失敗談の方が参考になると経営者の方から伺うことが多いので、もしよければ失敗談を聞かせていただけますか。

      諒自:うーん、失敗はあまりない、って言うとエラそうに聞こえてしまうかもしれないのですが、本当に失敗したと後悔していることってあまりないんです。むしろ失敗から学ぶことが多いので、失敗した後にそれを活かして次に進むことが大事なんじゃないかと思います。

      実際、パン作りでミスは起こります。生地をうっかり冷蔵庫に入れ忘れることもあります。そんなときも、失敗したからと生地を処分することは絶対にしないと決めているので、その生地をどう使えるかを考えて、別のパンの生地にしたり工夫して生地を救うんです。その過程に発見があったり、ミスかと思ったら結果的に意外とよいパンができたりもします。

      スタッフもミスをすることがあります。もちろん注意をしますし、スタッフも申し訳なさそうに「すいません」と謝ります。だけど、謝るより、その失敗から何を感じとれるかの方が、数倍大事だと思うんです。「なぜ生地が膨らまなかったのか」「なぜ材料を入れ忘れてしまったのか」。その感覚は大事にしてほしいと思っていますね。

       

      パンづくりに向き合う髙橋諒自さん。

      パンづくりに向き合う髙橋諒自さん

       

      ネイト:私たちも失敗については怒ったりしないです。怒ると「謝ればいい」というマインドになってしまいかねないですから。「失敗を隠して食材を捨てました」なんてことも起きないとも限りません。スタッフにも失敗を経験と考えてほしいと考えています。

       

      髙橋ネイトさん。

      髙橋ネイトさん

       

      競うのではなく個性を称えあっていきたい
      知識や技術を交換し助け合えば、おもしろいことも生まれるはず

       

      今後挑戦してみたいと考えていることはありますか。

      ネイト:二人ともビジネスをもっと広げたい、という気持ちはないんですけど、私は小さい店もやりたいと思っています。駅のホームとかにあるキオスクくらいの規模のお店です。

      今日はこっち、明日はあっちというように、コンビニエンスストア髙橋とは違った環境で仕事をする機会ができることで、スタッフのみんなにとっても息抜きになるというか、モチベーションもあがると思うんです。

      諒自:物販を増やしたいとも思っています。パンや料理の提供で半分、物販半分くらいの売り上げバランスにしたいです。

      ただし何でもいいわけではなくて、買い付けは私たちが良く知る人からしたいと思っています。取り引きのなかで関係が深まっていって、コラボ商品をつくったりイベントなどができたらいいですよね。でも、忙しくてなかなか手が回らなくてまだ全然進められてないんです(苦笑)。

      時間をつくるのはなかなか大変ですよね?以前の取材(※外部リンクに移動します)の際もバックオフィス業務が大変だと伺いましたね。

      ネイト:でも、アメックスのビジネス・カードですごく楽になりましたよ! 以前は、仕入れはすべて現金で払っていたので領収書の整理も処理も大変だったんですが、今は8割程度はカード払いにできていて、会計ソフトとも連携させているので、すごく簡略化されて本当に、本当に助かっています。お店と家庭の用事が終わってからとなるとどうしても徹夜になることも多かったのですが、夜に少しだけ自分だけのための時間も持てるようになりました。

      諒自:助かってるよね。それに、オペレーターさんにすぐに電話がつながるし対応も早くて、お店を支えてもらっている感じがします。アメックスのビジネス・カードがあると新しいことに挑戦がしやすくなると思います。

      最後に、お二人のように挑戦を続けている仲間である、経営者の方たちにメッセージをお願いします。

      ネイト:実は昨日、私たちはお店を経営して裕福になりたいというわけではないよね、という話を夫としていたんです。私の中の基準では、夜ご飯にお刺身が食べられているうちは、私たちは幸せなんです。個人店の経営は厳しいし、雇われていたときの方が楽かもしれません。だけど、やっぱり自分たちのやりたいことができて、毎晩お刺身が食べられるのは、幸せなことだと思うんです。だから、私たちも経営者としてまだまだ未熟ですし、大変な時代でもありますが、同じ時代に飲食店をやっているみなさま、一緒に頑張っていきましょう。

      諒自:そうだよね、一緒に頑張っていきたいよね。同じ外食店なのに、比べて評価を気にしたり、どっちがおいしいというようなことを競うよりも、それぞれの個性をどれだけ出せるかということを称えあっていきたいですね。

      僕はパンを焼いていますが、他のパン屋さんを決して敵対しているわけではないから、お互い知識や技術の交換をしていけたらいいと思っています。たまに厨房を見せてほしいといわれることがあるんですが、すごく忙しい時はさすがに難しいですが、そうでなければ見てもらっています。僕も新しいパン屋さんや、僕らとは規模が違う大きいパン屋さんの厨房を見せてもらいたいですし、僕たちの厨房が見たいという人がいれば、ウェルカムです。

      みんなで助け合って情報交換していくなかから、またおもしろいことが生まれてくると思っています。

       

      ■プロフィール

      髙橋諒自

      コンビニエンスストア髙橋 店主/パン担当

      千葉県生まれ。25歳の頃にサーフィン上達のためにオーストラリアに渡る。サーフィンが盛んなニューサウスウェールズ州バイロン・ベイで暮らし、現地のレストランで働くなかでパン作りに目覚める。帰国後は、神奈川・鎌倉のベーカリー「PARADISE ALLEY BREAD & CO」などで経験を積み、独立。

       

      髙橋ネイト

      コンビニエンスストア髙橋 接客/料理担当

      「コンビニエンスストア髙橋」がある、東京・練馬区春日町出身。銀座「ROSE BAKERY」や東京・江古田のベーカリー「パーラー江古田」にて料理を学んだ後に「コンビニエンスストア髙橋」をオープン。

       

      コンビニエンスストア髙橋

      東京都練馬区春日町3丁目2-4 春日町3丁目第2アパート4号棟

      03-5848-9127

      不定期営業(週5日営業)インスタグラムで毎月告知

      10:00〜18:00

      Instagram@convenience_store_takahashi ※外部リンクに移動します

       

      ■スタッフクレジット

      写真:表萌々花 取材・文:江六前一郎 編集:成田峻平(ライスプレス)

       

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      Published: 2023年6月23日

      Updated: 2024年5月24日

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