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自社株買いのメリットは?その後の株価への影響や効果を解説

自社株買いとは?メリットや株価への影響、リスクを専門家が解説
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概要

自社株買いとは、自己株式取得の一つで、株式市場から過去に発行した自社の株式を自らの資金で購入する、直接買い戻すことを指します。本記事では、自社株買いを行うメリット、株価に与える具体的な影響やリスク、自社株買いを行う際の注意点を解説します。

      監修者プロフィール:

      末永 寛(すえなが・ひろし)

       

      税理士

      一般企業における経理事務を約25年経験したのち、大手税理士法人勤務を経て税理士事務所を開業。フリーランスや中小企業専門の税理士として、税務業務のみならず、将来の企業運営も含めた経営サポート業務を提供。また、近年の電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も含めたITツール導入にも積極的に導入サポートを行っている。

       

      スエナガ会計事務所(外部サイトに移動します)

       

       

      【目次】

      自社株買いとは自社の株式を市場から買い戻すこと

      自社株買いのメリット

      自社株買いが株価に影響を与える理由

      自社株買いの方法

      自社株買いのリスク

      自社株買いを行う際の注意点

      自社株買いのまとめ

       

      自社株買いとは自社の株式を市場から買い戻すこと

      自社株とは、自社が過去に株式市場から発行した株式を指します。自社株買いとは、自己株式取得の一つで、株式市場から過去に発行した自社の株式を自らの資金で購入する、つまり買い戻すことを指し、株主への利益還元や株価の上昇促進、敵対的買収リスクの低減、ストックオプションなどを目的に行われます。また、自社株買いには会社法上の制限がありますので注意が必要です。

       

      自社株買いを行うことで得られるメリット

      株式は通常、投資家に株式を買ってもらうことで資金を調達することを目的として発行され、市場に流通させるものですが、自社株買いはその逆です。資金を獲得するのではなく、資金を使って購入するため、一見、享受できるメリットを想起しづらいかもしれません。ですが、自社株買いを行うことでもたらされるメリットは少なくないため、昨今注目を集めています。期待できるメリットとしては4つ挙げられます。

       

      株主への利益還元

      自社株買いをすると、購入した分、市場に出回る株式数が減ることになるので、企業の利益総額が変わらない限り1株当たりの純利益(EPS: Earnings Per Share)が向上します。自社の株式を保有する株主にとって、保有株式の1株当たりの利益配分が増えることは、当然ながら喜ばしいことです。株主への利益還元ができると、株主の保有意欲や購買意欲が高まることが期待できます。また、自社株に対しては、配当金が発生しませんので、支払う配当金が少なくなりコスト削減にもつながるでしょう。

       

      株価上昇による投資家へのアピール

      一般的に、自社株買いは、株価上昇の可能性を高めるといわれています。株主にとっては、株の価値が上がることは有益なことなので、自社株買いをすることは、投資家に対して「株主の利益を重要視している」ことのアピールとなるでしょう。また、株主を優先する姿勢を打ち出すことは、自社株を保有していない投資家に対してもポジティブな発信となるため、注目を集めやすくなるでしょう。

       

      敵対的買収リスクの低減

      株式の取得を通して、経営権を獲得することを企業買収といいますが、敵対的買収とは、経営権を獲得することを目的とし、対象となる企業の合意を事前に得ずに株式を取得し買収を行うことを指します。基本的には過半数の株式取得を目指す形で行われるでしょう。

       

      株式を市場で流通させることは資金調達の有効な手段の1つですが、株式の発行と同時に買収されるリスクが発生しています。自社株買いを行うことで、自社株の持ち株比率を高められるので、敵対的買収リスクを低減することが可能です。敵対的買収のリスクは企業規模に関わらずあります。万が一に備え、対策を講じておくことが大切でしょう。

       

      ストックオプションとしての活用

      ストックオプションとは、あらかじめ定められたある一定の価格(行使価格)で自社の株式を取得できる権利です。自社株買いを行い、買い戻した株式は、ストックオプションとして保管することも可能です。従業員のモチベーションの向上や優秀な人材の採用や流出の防止のために導入されるストックオプションとして活用することは、企業価値を高めることにもつながるため有益だといえるでしょう。

       

      関連記事:ストックオプションとは?種類や導入のメリット、注意点を解説

       

      自社株買いが株価上昇の可能性を高める理由

      前述した通り、自社株買いを行うと、株価上昇の可能性が高まるといわれています。株価上昇が期待できるのは、自社株買いにより、ROE(自己資本利益率)が向上し、PER(株価収益率)が低下するためです。それぞれについて解説します。

       

      ROE(自己資本利益率)の向上

      ROE(自己資本利益率)とは、Return On Equityの略で、自己資本をどれだけ効率良く利用し、利益を生み出すことができているかを表す財務指標です。

       

      ROEは次の計算式によって求められます。

      ROE(%)=当期純利益÷自己資本(株主資本)

       

      ROEが高い数値であればあるほど、株式によって得た資本を効率的に活用しながら利益をあげていると、高い評価となります。当期純利益が同じであれば、自社株買いを行うほど自己資本は減少し、ROEの数値は高くなるため、投資家目線で魅力的に見え、株価の上昇が期待できるでしょう。

       

      関連記事:ROE(自己資本利益率)とは?目安や計算式、ROAとの違い、高める方法

       

      PER(株価収益率)の低下

      PER(株価収益率)とは、Price Earnings Ratioの略で、株価が1株あたり純利益(EPS)の何倍まで買われているかを見る指標で、市場での株価が割安か割高かを判断するための目安となります。EPSは当期の予想数値を用いるのが一般的です。

       

      PERは次の計算式によって求められます。

      PER=株価÷EPS(1株当たりの純利益)

       

      PERが低いほど、株価は割安だと判断され、短期間で購入金額を回収できることを意味します。投資家にとって魅力的になるといえるでしょう。前述の通り、自社株買いをすれば、EPSが向上するため、PER値が下がります。つまり、自社株買いを行うことで、投資家から注目が集まることや株価の上昇の可能性が高まるといえるでしょう。

       

      自社株買いの方法

       

       

      自社株買いの方法は、「上場企業」と「非上場企業」で異なります。それぞれの方法について解説します。

       

      上場企業の場合

      上場企業の自社株買いは、一般的にTOB(株式公開買い付け)で行われます。株式公開買い付けとは、「買付価格」「期間」「株数」といった条件を公開し、投資家から株式を買い集める方法です。TOB(株式公開買い付け)では、時価の30〜40%を上乗せして株式を買い集めることが一般的です。

       

      非上場企業の場合

      非上場企業の株式は、市場で取引されていないため、非上場企業の自社株買いは、自社の株主と直接取引をして株式を買い集めます。上場企業の株式とは違い、株式の時価がないため、「類似業種比準価額方式」や「純資産価額方式」で算出した金額をベースに当事者間で決めます。

       

      「類似業種比準価額方式」とは、業種が似ている上場企業と自社を比較し、株価を算出する方法で、「純資産価額方式」とは、自社が解散し、会社の全資産と負債を精算した場合の純資産額を基に株価を算出する方法です。

       

      自社株買いによって起こり得るリスク

      懸念されるリスクについても把握し、備えておきましょう。

       

      自己資本比率の低下

      自己資本比率とは、総資本のうち、返済する必要がない自己資本が占める割合(自己資本÷総資本)を指します。自社株買いを行う際には、手元にある資金を使うため、外部への資金流失にともない、自己資本比率の低下が避けられません。自己資本比率が低いと、周囲からは、経営が不安定や資金繰りが悪化しているなど、財務の健全性が低下しているようにみえるため、自己資本比率に注意して行うことが重要です。

       

      関連記事:資金繰りとは?悪化する原因と改善方法を解説

       

      売却処分による株価下落

      自社株買いで取得した株式の取り扱い方法は「資産として保有」「売却処分」「消却」の3つです。「売却処分」の場合は、株価下落のリスクがあるため注意が必要です。自社株買いで取得した株式を売却処分すると、売却資金は獲得できますが、売却処分した株式は再び株式市場に流入するため、発行株式総数が自社株買いの実行前に戻ります。つまり、向上していた1株当たりの利益、EPSも減少します。これによって株価下落を招く可能性が高まります。このようなリスクも考慮したうえで、自社株買いで取得した株式の取り扱いを検討しましょう。

       

      みなし配当として課税される可能性(非上場企業の場合のみ)

      非上場企業の場合、自社株買いによって、みなし配当として課税される可能性があるため注意が必要です。みなし配当とは、法人税法(外部サイトに移動します)第24条および所得税法(外部サイトに移動します)第25条で規定されている制度です。税務上、原則として株式の発行会社より支払いを受けた金銭が、株主自身が出資した金額を超える場合に、超えた部分の金額を配当金として取り扱うと規定されているので、超えた部分の金額がみなし配当の金額となります。

       

      みなし配当にあたる場合、自社株買いによって得た資金は配当所得として、給与所得や事業所得等の所得と合算し、所得税を計算することになります。場合によっては所得税率が上昇し、想像以上の税負担になることもあるため注意しておきましょう。

       

      自社株買いを行う際の注意点

      自社株買いを行うために注意すべき点は大きく2つあります。

       

      会社法上の規制

      自社株買いを行う際は、まず会社法上の規制を確認しましょう。会社法では、自社株買いの上限を定めた「財源規制」、株主総会や取締役会の決議を必要とする「手続き規制」、上場企業はただちにその旨を開示しなければならない「開示規制」などの制限があります。これらの規制は自社株買いによる資金繰りの悪化や相場操縦行為を防ぐなどの目的で設けられています。ルールを遵守し、適切な方法で行いましょう。

       

      取得する割合

      自社株買いで取得した株式には、議決権がありません。短期間に多くの自社株買いを行うと、既存株主間での議決権比率が想定外に変わる可能性があります。議決権比率が高い株主にはさまざまな権利の行使が認められるため、経営に悪影響を及ぼさないためにも、買い取った後の株主構成を想定したうえで取得する割合を決め、自社株買いを行うようにしましょう。

       

      自社株買いのまとめ

      以下に、自社株買いについての要点をまとめます。

       

      ・自社株買いとは、自社の株式を市場から買い戻すこと

      ・自社株買いを行うメリットは、株価上昇による投資家への還元や、敵対的買収の防止

      ・自社株買いを行うリスクは自己資本比率の低下や売却処分による株価下落の可能性

      ・自社株買いについて会社法で規制が定められているため、事前の確認が必要

       

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      Published: 2024年7月30日

      Updated: 2025年3月24日

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