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編集者・草彅洋平コラムVol.3「好き・数奇・サウナ」〜人とつながる不思議なハコ〜

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草彅洋平

編集者

概要

広告やブランディング、メディア運営まで幅広く手がける、編集者の草彅洋平氏。連載コラム第3回では、今年の8月に『日本サウナ史』を出版した草彅氏が、サウナを極め、その歴史を調べていくなかで得たビジネスにも通ずる気づきや、世にあふれる情報を鵜呑みにせず、大切なことを自分で判断する姿勢について綴ります。

      編集者の草彅洋平氏(写真中央)。編集のスキルと全方位型の知識を活かし、広告やブランディング、メディア運営から場所作りまで幅広く手がけている。そんな草彅氏が愛してやまないのが「サウナ」。「フィンランド政府観光局公式サウナアンバサダー」を務め、さながら伝道師のようにサウナの魅力を啓蒙している。

      サウナはリフレッシュのためだけの空間ではなく、ビジネスにもいい影響を与えてくれると草彅氏。思考を整理し、人と出合い、サウナを通じてさまざまなことを学んできた。当連載は、草彅氏がサウナを極めていく過程で得た気づきや出会いのエピソードについて本人に綴ってもらう。

      今回は、今年の8月に『日本サウナ史』を出版した草彅氏が、サウナの歴史を調べるなかで得たビジネスにも通ずる気づきや、世にあふれる情報を鵜呑みにせず、大切なことを自分で判断する姿勢について綴る。

       

      スマホゾンビ

       

      僕はスマホ依存症だ。

      街を歩く時もトイレに行く間も、寝る間もスマホを手に握りしめている。電車に乗っている人を眺めていると、ほとんどの人が携帯を弄っているので、おそらく自分だけではないと思うのだが、僕は自らがスマホに対して依存度が高いことを知っている。というのも充電が切れそうになるだけでソワソワし、忘れ物が多いのでちょっとしたこと(イヤホン失くした、とか、携帯忘れた、とか)で右往左往する日々を毎日過ごしているからだ。

      ハッキリいえば僕は「スマホゾンビ」である。特に理由もなく、読みたくもないネットニュースに目を通して、ぼんやりとしている。正気のない顔をして、四六時中スマホに目を通し、仕事や情報収集を理由にSNSやさまざまな記事や動画に目を通して、無為な日々を過ごしている。いまこうして画面越しに読んでいるあなたも、ほら。僕と同じタイプの人かもしれない。

      スマホを眺める習慣を止めるというのはなかなか難しい。僕の子供は2歳だが、立派なスマホ中毒者になってしまって現在の我が家は大変困っている。絵本で踏切の説明をした際に、実際の動画を見せた方が学習意欲が高まるだろうとyoutubeを見せたことをきっかけに、彼はyoutubeが見たくて見たくて仕方がなくなってしまった。毎日朝から「カンカン見たい〜」と大泣きし、隙あれば両親のスマホをいじっている。子供でもこの熱中ぶりなのだから、大人も同じであろう。スマホから逃れるためには、強制的に電波のつながらない場所か、手に取ることができない状況に身を置くよりないだろう。

      現代のサウナブームの根幹も、スマホとの関係があるように僕は思っている。盗撮の疑いもあり、脱衣所や浴槽にスマホは持ち込むことができないため、温浴施設には半ば強制的にスマホのことを忘れられる聖域(アジール)が生まれている。人はどこかでスマホに依存しつつ、スマホから逃れたいという深層心理があるのではないか。こうした人間の相反する気持ちに、これからのビジネスのヒントがある気がするのだが、どうだろうか。

       

      インターネット上のサウナは間違いだらけ?

       

      さて、そんな大好きなスマホを使って、日本に入ってきたサウナのことを調べはじめてみたときのことだ。毎日のように検索ワードに「サウナ」「歴史」と打ち込んで、一件一件詳細に調べてみると、インターネットで書かれていることは有益な情報もあったが、ほとんどがデタラメも多かった。

      ネットリサーチではっきりしたことは、大きくは以下の三つのことだ。

      ① オリンピックと関係があるらしい

       A :1964年東京オリンピック説(有力)

       B :1936年ベルリンオリンピック説 

      ② 東京温泉が日本のサウナの発祥 

      ③ はじめてフィンランドサウナストーブを導入したのは「スカンジナビアクラブ」

      結論から話せば、③は事実で、①と②は「そうとも言えるが、言い切れない」不確かな情報であった。

      ①と②はほとんどがブログやSNS。③は日本サウナ・スパ協会の技術顧問である中山眞喜男氏のインタビュー記事である。つまり専門家が実名で喋った③のようなメディアは確証が高く、ブログやSNSといった素人が趣味で書いているようなものは、事実もあったが、ほとんどが誤りであった。

      世の中フェイクニュースが問題になっているが、サウナの世界も同じだったのだ! ブログやSNSの書き手のほとんどは誰かから聴いた話を孫引きしているだけで、きちんと検証して記載したものではなかった。皆曖昧な伝聞情報を自信満々で我が物顔で記載していく。だからこそ、デマがどんどんと広がっていくのだ。

      ・伝聞した話をそのまま書かない

      ・一次資料を確認する

      ・一次資料を引用して、エビデンスを出した上で記載する

      僕が学生時代に論文を書くときに当たり前のことだと教えられてきたことが、インターネットの海の中では誰もきちんとやってはいなかった。それでも、サウナのことを調べてみるまで、まさかここまでネットが適当だとは思いもよらなかったよ!!

      サウナの歴史を調べ始めてから、僕がスマホを手に取る回数が減ったのかというと、残念ながらそうはならなかった。だが、より一層警戒してネットのコンテンツを精査する癖が身についたといえる。大切なことは鵜呑みにせず、なんでも疑ってかかり、自分で調べてみることだ。このことはビジネスでも、僕のようにものを作るうえでも、社会で甘い投資話に引っかからずに生きていくうえでも大事な部分であろう。

      きちんと調べる。考える。

      スマホを片手に、今日も地に足つけて生きていくのだ。

       

      ■プロフィール

      草彅洋平

      編集者。フィンランド政府観光局公式サウナアンバサダーの一人。著書に『作家と温泉』、『日本サウナ史』など)

      日本サウナ史  ※外部リンクに移動します

       

      ■スタッフクレジット

      写真提供:草彅洋平 編集:榎並紀行(やじろべえ)、株式会社CINRA

       

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      Published: 2021年12月8日

      Updated: 2023年10月17日

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